COLUMN / ESSAY

「iPadほしい~!ってか?」 -社会評論-

最近、ちょっと胸ぐるしい感じやどきどき感を覚えるので検査に行ったら「心臓が肥大傾向にある」と言われて精密検査を受けることになった。医者によると「火急の対応を要する状態では無い」という事だが、それにしては自覚症状が気になる(ちなみに、7年後に心筋梗塞を発症した)。
そんなこんな頃、新聞を読んだりテレビを観ていると、別の意味で胸ぐるしさやどきどき感を覚えるときがあるから紛らわしいが、その私の心臓に負担をかけているのは、現政権の体たらくはもちろんとしても、「トヨタがテスラ社に45億円出資」とか「iPadに長蛇の列」とか「日本人宇宙飛行士の活躍」という類のニュースだ。

次世代の電気自動車に関しては、世界で最も先進的でなくてはならない日本の自動車メーカーが外国の技術に投資する、それも、昨日今日出てきたベンチャーに45億円も差し上げるという記事を眼にした時は、頭がくらくらするほど不愉快な気分に陥ったし、iPadを買うために並んでいる若者たちを見るとギブミーチョコレートのように情けないというか屈辱的な気持ちになる。
テレビでとうとうとiPadの素晴らしさを説明するアナウンサー達に、これを日本人では無くアメリカ人が開発したという悔恨の気持はみじんも無く、前夜から並んでいる若者たちも、ただただiPadの先進的な機能に陶酔しているだけで、先を越された悔しさは全く伝わってこない。

日本人宇宙飛行士に関しては「GAZOO」のコラムにも書いたが、大金を払ってアメリカ製のスペースシャトルに乗せてもらっているに過ぎない現実を情けなく思うし、資源も土地も乏しい我が国が、唯一、世界に対して優位性を保てる資質があるとすれば、それは技術力でしかあり得ないと思っている私にとって、これらの現実はあまりにも空しい風景に映る。

こういう「無念」の思いを日本国民が共有しない限り、どんどん世界から取り残されていって、自動車も電子機器も原発も新幹線も飛行機も医療も医療機器も食料も繊維も何もかもが競争力を失い、またもや、猿まね日本に逆戻りとなるだろう。国防はアメリカに依存して、技術を持たず、子供を育てるのに負担が大きく、食料自給率が極端に低く、石油は輸入頼りの我が国に、どんな未来が用意されているのだろう?

林 みのる

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