童夢へ
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﹁普通免許取得﹂ この頃の我々の最大の楽しみは普通免許の取得だった︒なにしろ︑頭の中で考えていることのすべてが普通免許あっての話だったから︑普通免許のない間はまるで実体のない幽体みたいなもので︑毎日毎日︑免許が取得できたらあれもするぞこれもするぞと想像するしかなかった︒ だから︑二人とも18歳になると同時に免許試験を受けに行ったが︑その頃は︑今ほど自動車教習所をもうけさせるようなシステムが確立していなかったので︑通常はお金のかからない自動車運転試験所で受験するのが当たり前だったし︑それほど難しくもなかった︒ 我々にとっては﹁人間資格認定書﹂みたいな普通免許を取得したものの︑もちろん︑肝心の自動車を持っていない︒鮒子田はどうすればレーサーになれるのか具体的な方法を知らないままだったし︑私は自分の車も持っていない状況で︑どうしてレーシングカーなど作れるのか想像すらできなかった︒ 噴火中の火山からあふれ出てくる■熱のマグマのようなレーシングカーへの熱情は︑18歳の90

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