童夢へ
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﹁東大阪の従兄﹂ 私がスポーツカブを一生懸命に改造してレーサーのように見せようと努力している頃︑しばしばバイクで東大阪に住む従兄の林将一のところに遊びに行った︒ 将一は3歳年上だったから既に大型バイクにも乗れたので︑ベンリィSSのロードレーサータイプに乗っていたが︑実はこれはポンコツバイクを巧みに改造したもので︑ほとんどが手作りのカスタムバイクと呼べるなかなかの優れものだった︒何でもできる憧れの兄貴のような存在で︑遊びに行くと︑一緒に生駒山のバイク乗りの集会なんかに連れて行ってもらったが︑山の中腹に︑最後は垂直になるような坂道というか高い土手があり︑みんなでどこまで登れるかを競い合うという至極単純なチキンレースのようなゲームを楽しんでいた︒面白いが︑最後は必ず転倒して転げ落ちるしかなく︑大切なバイクを壊したくない私は一度も挑戦しなかった︒ 私が︑たびたび将一の所を訪れたのは︑その集会だけが目的ではなく︑夜になると連れて行っ70

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