童夢へ
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オーディオ・マニアで︑自室で受けた仕立物を仕上げる傍ら︑内職に電気屋から頼まれたアンプを製作していた︒秋葉原なんかとは比べ物にもならないが︑京都に一か所しかないオーディオ部品などを売っている専門店街でよく顔を合わせていたので知り合いになり︑部屋に遊びに行くようになった︒6畳一間くらいの狭い部屋に独り暮らしで︑おっちゃんと呼んでいたが何歳なのかは考えたこともなかった︒推定50歳当時というところか?  私にとってこの小さな部屋の中はパラダイスで︑おっちゃんのオーディオ談義を聞いたり置いてある本を読んだり︑けっこう入り浸り状態だった︒そのうち︑おっちゃんがバイトで引き受けているアンプ製作の簡単な手伝いをするようになり︑いつの間にか︑シ■シーへの各機器のレイアウトや加工︑配線なども手伝うようになっていた︒ 特に配線とか半田付けは得意で︑きっちりと計算して︑配線を束ねながらプリント配線のように整然とレイアウトしていたから電気店からも好評で︑いつしか︑洋服を仕立てるおっちゃんの横で半田ゴテを動かしているのが日常になっていた︒ 報酬として直接お金をもらった記憶はないが︑ほしい部品を買ってもらったり︑ジ■ンクボックスにある部品はかなり自由に使っていたように思う︒そうして徐々に自分自身のオー56

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