童夢へ
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ていたわけではなかったようである︒ このようにして︑たちまちセレブ林家は貧乏所帯風になってしまったが︑父のマイペースな生活ぶりは相も変わらずで︑個展の後はそこそこ優雅に過ごし︑お金がなくなってくると個展を準備するという自転車操業的その日暮らしが続いていた︒ しかも︑母が商売を始めて家計の足しにするようになってからは︑父の生活はますます優雅になり︑後半は完全に髪結いの亭主プラス自分の収入使いたい放題で︑父の友人たちが盛んに羨ましがっていたのを覚えている︒39幻のセレブ林家小さくなった寺町の家結局、残ったのはこの小さな町家だけだった。純和風建築の古い家だったが住み心地は悪くなかった。隣は同志社大学の女子寮で環境にはめぐまれていたが、特にメリットはなかった。

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