れてガラスを割ったり︑柱が腐って倒れかけの塀を止めてあった縄を全部ほどいて倒してしまったりというようなことが原因らしい︒私にはそんな大それたことをしでかした記憶が全くないから信じられないが︑隣の寛ちゃんに手伝わせたから一緒に退園させられたということで︑それ以来︑あんなに仲良しだった寛ちゃんとすっかり疎遠になっているから本当なのかもしれない︒ とにかく︑この件をはじめ︑事あるごとに︑﹁あんたを育てるのにどれだけ苦労をしてきたか﹂をくどくどと聞かされながら育ってきたようなものである︒ 小学生の終わり頃︑全校で知能指数の検査みたいなことが行われ︑単純な計算や図形の組み合わせを探すとかチンパンジーでもできるようなことをさんざんやらされたあげく︑私だけが教育委員会のどこかで再検査を受けることになった︒ 丸一日︑小さな部屋に閉じ込められて同じような無意味な作業を続けさせられるものだから︑人の10倍は飽きっぽい私のモチベーションが続くわけもなく︑最後は面倒すぎてギブアップしていたから何のデータも取れなかったと思うが︑母はこの一件だけを心の拠■り所に︑ずっと諦26
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