童夢へ
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たまま海に飛び込むよりも暴挙であることは理解していたから︑断腸の思いでレーシングカー作りを断念せざるを得なかったのが実情だ︒ しかし︑心を入れ替えたつもりで結婚したが︑仕事と言えばバイト感覚の工業デザインと︑お手伝い感覚のハングライダーの販売と︑まだ続いていたFRP製品の製造だけで︑どれも熱中できるほどでも無かったし︑当初こそ楽しく新鮮な出会いや体験を享受していた放蕩三昧の毎日も︑2年以上も遊んでいると︑することもなくなるし飽きてくる︒そんな虚ろな毎日にも辟易していたから私は退屈しきっていた︒今日は誰とデートしよう? 今夜は何を食べよう? 何処に飲みに行こう? そんなことくらいしか考えることのない毎日だった︒ 二日酔いの朝︑吐き気を抑えながら漫然とソファに寝そべり︑結末の解りきっているような安直なドラマに見入っているような時間は特にイライラがつのる︒いつの間にか︑しばらく手にしなかったスケッチブックを取り出し︑手持ち無沙汰を紛らわすように自動車の絵を描くようになっていた︒ 面白いことに︑あれだけ飽きもせず描き続けていたレーシングカーの絵は影をひそめ︑描か319放蕩の日々

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