あんな急坂をあんなに大胆に飛び出さないと飛ばないのなら︑今までやっていたことはおままごとみたいで飛ぶはずはないなとも思った半面︑ピートから送ってきたデモテープを見る限りもっと容易いもののように見えたので︑ち■っと戸惑う光景ではあった︒ 実際に飛ぶことを目撃したことで少し希望が見えてきた我々は︑何機かのグループが飛んでいる丘陵の端の方で試してみることにした︒しかしまだ怖いのでなるべく緩やかな斜面を選んでテイクオフを試みるが︑相変わらず浮き上がる気配は全くない︒ やっぱりビビっていては駄目だともう少し傾斜のきつい斜面で試してみても転ぶだけだ︒飛んでいる連中の機体といえば︑塩ビ管にテント生地を張っただけのようなみじめな機体で︑一方の飛ばない我々の機体は最新鋭のコンペティション・モデルだ︒手作りカートとF1ほども差のあるこの機体が飛ばないことがおかしい︒ そうこうしているうちに日も暮れなずんできた頃︑それまでも入れ替わり機体を見に来ていたくだんの飛べるチームの連中の一人が︑見るに見かねたのか﹁私に試させてもらえませんか?﹂と申し出てきた︒もうほとほと疲れ果てていた我々は︑これを渡りに船と快諾した︒310
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