童夢へ
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らず知らずのうちに少しずつ変わって行っていた︒ その頃は︑レーシングカー作りもPANICを最後に断念することを決めていたし︑それまでに必要な予算を確保するためにいろいろなビジネス的なことをしてきた経験から︑レーシングカーさえ作らなかったら︑なんとなく人並みの生活を維持することくらいはたやすいと思えるようになっていた︒自分の将来が確実にホームレスと断定する必要もないんじゃないかと思うようにもなっていたし︑今までほど自らを卑下するような気持ちも薄らいできていた︒ そんなある日︑お母さんが︑初めて関西で出店された﹁ミスタードーナツ﹂のチラシを持ってきて︑﹁これが食べたいから二人で買ってきて﹂と言いだした︒それは神戸近くでかなり遠いところだったが二人で深夜の国道を神戸方面に向かった︒ たぶんK子ちゃんサイドでは︑﹁あんたもいろいろあったけれど今は何もないんだし︑もういい歳なんだから︑ずっと一筋に想ってくれている林君なんかどうなの?﹂くらいの話があったのかなかったのか?その日は終始いつもとは違う緊張感に包まれたドライブとなった︒ ぎくしゃくとしたたわいない話から何となく恋愛に関する話題になった頃から︑私が何か言285初恋の終わり

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