童夢へ
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電話をして﹁たまには京都に遊びに来いよ﹂と誘った︒ 解良は﹁僕を誘ってくれるなんて珍しいねー﹂等と言いながらもすぐに京都にやってきたが︑即︑工場に直行して作業が始まった︒解良は﹁仕事しに来たんじゃないよ﹂と文句を言いながらも︑何故か持参したつなぎに着がえて手なれた手つきでエンジンの搭載を始めた︒ おかげで作業はスムーズに進行したが私には大きな悩みがあった︒それは︑設計の時に参考にしたN360のエンジンのキ■ブとヨシムラ・チューンのエンジンのキ■ブの位置と大きさが異なり︑カウルに干渉して収まらないことだ︒ 後ろのカウルを切ってしまえばなんということはない話なのだが︑もともと単純なスタイルだから︑このテール部分のすっきりと後ろまで伸びた形状はどうしても維持したかった︒ 後ろ部分だけ少し幅を広げて作り直すとかパッチを当てて一時しのぎをするとか図面と睨めっこして戻ってくると︑すでに︑解良によって無残にもカウルのテール部分は切り取られてしまっていた︒私が﹁何で切ってしまったんだ!﹂と怒ると︑﹁だって入らないんだから切るしかないだろう?﹂と至極当然の答えが返ってきた︒いずれにしろ︑鈴鹿に持ち込む前夜の出来事だから他に選択肢はないのだが︑私はしつこく文句を言い続けていた︒276

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