童夢へ
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自覚できた︒ 具体的にどうとは言えないが︑私はこの時に大きく変わったと思っている︒特にお金に対する考え方は一変した︒﹁どう変わったのだ?﹂と言うと︑普通の人の感覚に少し近づいただけの話だが︒ 母のおかげで緊急避難できたので︑あっちから借りてこっちに返すというようなタライ回しは止めて︑実質的な収入を得るように努力する余裕ができてきた︒ しかし︑とはいっても時給いくらのバイトを始めたところで1000万円からの借金は返せないから︑私は︑くだんの美術道具の製作会社のO社長に相談し︑設計が必要な少し複雑な製作物を下請けする形でまわしてもらうことにした︒ 下請けといっても︑その会社の一部を借りて作業するのだから︑まるでおんぶに抱っこのような厚遇だが︑ここのO社長も私の良き理解者だったからできる限りの協力をしてもらっていたのだと思う︒ 私が京都に帰った頃は︑ち■うど大阪の万博が始まって少し経った頃だったが︑この美術道270

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