もらえない可能性もあるので必死だ︒それでなくても資金は底をついていて材料も買えなくなっていて余計に作業の進■を妨げる︒ 万策尽きてコンレロのエンジンを売却することにした︒慶治の支払うべき金額にはエンジン代金が含まれているが︑この時点ではエンジンを売却する以外に作業を継続させられる方法はなかった︒慶治には無理矢理に納得してもらったが︑手持ちのS800のエンジンは明らかにパワー不足だった︒ 焦っても焦っても問題は次々と噴出してきて予定はどんどんずれ込んでいく︒もうすべてのスタッフが︑といっても3〜4人くらいだったが︑疲れを通り越してトランス状態で会話もろくにかみ合わないくらいに朦朧としていた︒ 近所まで買い物に行かせたらなかなか帰ってこないので探しに行ったら︑車に乗る前に駐車場で倒れ込んで寝てしまい︑時期の遅い小雪が体を覆って凍死寸前とか︑シ■シーの下にもぐって溶接をしたまま寝込んでしまって︑蠟付けのバーナーが髪の毛を焦がしていても気がつかないとか︑とにかく︑レーシングカーを作るというアカデミックな作業とはほど遠い生死を■けたアドベンチ■ラスな日々が続いていた︒261田中慶治
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