童夢へ
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に幽霊が出る時のBGMのような︑なにかのうめき声のような︑音というか声というか︑とにかく得体の知れない音声が絶えず聞こえてきていた︒ これは終戦後︑海外に抑留されたり離れ離れになった家族に子供の声を聞かせてあげたいが︑戦後間もなくで電話もつながらないし︑先方に蓄音器もないだろうから︑郵便局に設置した録音機から︑ビニール製のレコードに音声を直接カッティングしたものを︑手■しの組み立て式簡易プレーヤーとともに郵送して︑子供や孫の声を楽しんでもらおうという発想だった︒ボール紙製のワンタッチで組み立てられるプレーヤーは良いとしても︑同じくボール紙製のターンテーブルを︑直接︑人差指で回転させようという発想には無理があり︑ターンテーブルを︑多少︑慣性のある木製に変えたりしていたが︑結局︑手紙並みの価格で送れるレコードプレーヤーはお蔵入りとなった︒ しかし︑父がこの開発に没頭していた1年間くらい︑毎日のように︑このなんとも不安定な音声を聞かされ続けていた家族はたまったものではなく︑特に幼年期の私の情操教育には多大な悪影響を及ぼしており︑未■■だにカラオケが苦手である︒ ところが︑父はこのためにドイツ製のカッティングマシンとかAKAIのテープレコーダー18

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