童夢へ
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の美術道具の製作会社から相談があると電話をもらったので久しぶりに訪れた︒ 何でも︑横尾忠則氏がデザイン監修するせんい館?だったかのモニュメントの試作の問い合わせが来ているのだが︑手に負えそうもないので協力してほしいという話だった︒ 裸の女性の体が壁面から半分くらい浮き出ているようなデザインで︑ポーズの異なる点数が多く︑またリアリティが重要だが時間がないという難しい要求だったが︑キーポイントは原型の彫刻を誰に頼むかというところで難航していたようだ︒著名な作家に依頼するとべらぼうに高くつくし︑だいいち時間が間に合わない︒ 適当な彫刻家のあてもないから断ろうかと思っていると聞いて︑私が︑﹁実物から型取りすれば充分に間に合う﹂と提案したら︑やろう! ということになってしまった︒ やろう! は良いが︑なにしろ実物とは生身の女体である︒提案はしたものの︑24歳の青年にとってはその作業を想像するだけでも興奮の極致で赤面が隠せないような状態なのに︑事もあろうか︑私が試作を引き受けることになってしまった︒ O社長がどこからか女優の卵というふれこみの若い女性を連れてきたが︑さすがに会社のアトリエでの作業は気が引けたのか︑場所は忘れたが︑どこか別の場所を探してきてO社長220

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