童夢へ
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参加できる︒パドックパス2枚を10万円で買ってくれないか?﹂という話だった︒明日の早朝までに必要と言うから躊躇していたら︑富田が﹁行こうよ﹂と言うので︑夜道を京都から富士まで走った︒明け方の待ち合わせ時間に到着した富士スピードウェイのゲート前には︑くったくのない笑顔でMが待っていたので10万円を渡したところ︑﹁あっ︑パスを持ってくるのを忘れちゃった﹂とパドックまで取りに戻ったまま二度と戻ってくることはなかった︒長時間待たされて︑そろそろ事情が呑み込めてきた頃︑私と富田は顔を合わせて︑﹁やっぱりMやなー﹂と嘆息をついたものだ︒ それでも︑童夢を立ち上げた時︑その後も借金を重ねてにっちもさっちも行かなくなっていたMを呼び寄せてメンバーに加えたが︑童夢が京都に本社を建設し自動車メーカー関連の仕事でやっと先行きが見えかけた時︑他の役員と結託して︑この仕事と会社ごとの乗っ取りを画策されて︑あわや童夢消滅という危機に■した︒この辺りの状況については﹁童夢から﹂で書こう︒ こんな厄病神のようなMと付き合い続けた唯一の理由は︑彼がまれに見る想像力とアイデ203天才&詐欺師のMとの出会い

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