﹁飛び出したエンジン﹂ しかし前川さんは︑直前になって運び込まれてきたゴミの山のような物体を見て呆れはてて﹁これは無理やで﹂とすっかりお手上げで作業を手伝ってくれる気配がない︒まあ︑当然といえば当然だが︑私はそうもいっていられないので工場の片隅で出来るところから作業を始めた︒ もともと︑こんなこともあろうかとS600のオリジナル・シ■シーにも架装できるように対処していたから︑気を取り直し︑裸のS600のシ■シーにモノコックを搭載したあたりから︑なんとなくレーシングカーの雰囲気が出てきたが︑そうなると︑もともとレーシングカー大好きの前川さんが黙って見ていられる訳もなく︑いろいろ手伝い始めてくれた︒そのうち︑就業時間が終わってもほとんどの従業員が居残って作業を手伝うようになってくれて︑ゴミの山はみるみるレーシングカーらしい形になっていった︒ しかし︑いかんせん全体的に遅れすぎている︒この頃のレーシングカー作りはイコール徹夜の連続は当たり前だったが︑それにしても時間がなさ過ぎた︒192
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