童夢へ
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なった︒私のドラテクもかなりのものだと自負しているが︑なにしろ︑乗っている愛機はグランプリ・マシンだ︒負けるわけはないが︑あんまりぶっちぎっても腕前は評価されないからいろいろシナリオを思い描きつつも︑スタートの合図とともに飛び出しセカンドがふけきった時には︑もうベレットGTはバックミラーから消えそうにまで遠くになっていた︒ 山道を走る時に最も危険なのは対向車である︒それも︑対向車線の対向車は計算に入れておくべきだが︑夜中の山道では相手も対向車の存在を忘れて車線を割ってくることもあるから︑コーナー出口で鉢合わせしたら万事休すだ︒ 対向車のある山道をサーキットと同じセオリーで走っていたら命がいくつあっても足りない︒私が飛ばし屋なのに事故らしい事故を起こしたことがないのは︑お手本通りのスローインではなくフルブレーキングでコーナー奥にまで突っ込んでいく走法だから︑万一の場合でもそのままブレーキを踏み続ければ停止するし︑車の姿勢も前下がりのままだからフロントタイヤに荷重もかかっている︒加速中の前上がりの姿勢からペダルを踏み変えてのブレーキングよりはかなり安全に走れる︒183駆け巡る日々

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