童夢へ
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﹁消えたK氏﹂ いつの頃なのか全く思い出せないが︑ある日︑ガレージの車がほとんど消え去りK氏の消息が解らなくなった︒ 探そうと思っても︑改めて考えるとK氏の何も知らないことが解ってきた︒ふらっと現れてふらっと消えていくのが常だったから自宅さえも聞いたことがない︒ やぶさんに聞いても知らないらしいが︑﹁いずれこうなると思っていたわ﹂と︑何か訳知り顔が気になったものの為す術はない︒ K氏とは︑1967年の第4回日本グランプリで総合優勝できるマシンを作ろうと壮大な夢を語り合っていただけに︑突然︑後ろ盾を失った私は茫然自失という感じだった︒また︑それだけではなく︑友達というよりは親分子分か書生のような間柄だったから︑すべての面での影響力が大きすぎるほど大きな存在であり︑浮谷を失ったうえにK氏までいなくなってしまった私は︑気持ちの中にぽかっと大きな穴のあいたような心もとない脱力感と失意に︑しばらく168

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