まで用意していたな？﹂と聞くと﹁知らんで﹂と言うから背筋がぞっとしてきた︒いったい誰が灯したんだ⁉ この頃は︑ジムカーナやヒルクライムなどにも出かけて行った︒鈴鹿で知り合った東京のOさんが神戸のヒルクライムに参加しに来るというので応援に行ったら︑指定された整備スペースは誰かの私邸の庭先で︑長い石段の先に大きな門がそびえる︑豪邸というよりもお城にちかいような大邸宅だった︒ そこでエアクリーナーを外したりタイヤを換えたりしていたら︑その階段の上の方から一人の女性がすこぶる優雅な振る舞いで降りてきた︒その女性の美しさを私のつたない筆舌で表現するのは不可能なほど絶世の美女だったが︑そこにいた全員が茫然と立ちすくんで階段から降りてくる彼女に見とれているという︑まさに降臨という光景だった︒ ﹁何をなさっているの？﹂というのが彼女の第一声だったが︑いろいろ話をするうちに﹁面白そう﹂とレースを観に来ることになった︒人の多いスタート地点ではいろいろな人に挨拶をしていたから地元では著名な人だったんだろう︒166
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