浮谷が亡くなってから︑彼の足跡を慕っていろいろな人が集まりいろいろな出来事が伝説となり神格化されていったが︑浮谷に関するインタビューを受ける時などに常に感じるのは﹁浮谷ってもっと普通に魅力的な男だったよね﹂という違和感である︒ スイカ売りの少女を見て自分を振り返る逸話があるが︑それが浮谷の何かを表しているほど取り立てて言うほどのエピソードではないと思うし︑こんなことを針小棒大に誇張することが既に浮谷を充分に表現できていないと感じてしまうほど︑ダイナミックで不思議な魅力に■れた人間だった︒ いつも浮谷との思い出を探る時に信じられないのは︑あの数々の思い出や出来事が凝縮された濃密な時間が︑たった1年ち■っとの間に展開されたという事実だ︒ その激動の時間の流れの中心にいたのが浮谷であり︑明らかに︑浮谷の爆発的なエネルギーと行動力が我々の原動力になっていたし︑リーダーシップなどという生やさしい言葉では言い表せない︑地球におけるマグマのような︑原子炉におけるプルトニウムのような存在だった︒159能天気か思いやりか深謀遠慮か
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