﹁あっけない現実﹂ 翌朝︑私が作業の続きをしていると浮谷がやってきて︑﹁林君のS6借りるよ︒ち■っと走ってくる﹂と言うので︑車の下に潜ったまま︑﹁駄目だよ︒シートベルトないから﹂と大声で叫んだが︑聞こえなかったのか無視したのか︑キキッとタイヤノイズを発しながらコースに出て行った︒ 私は気にも留めずに作業を続けていたが︑そのうち︑サーキットを走る車の爆音が消えてしまっているのに気がついた︒辺りも妙な静寂に包まれている割には何となくざわついた感じで︑真昼間の割には空も景色もどんよりと暗く重くモノクロームな雰囲気が異様に感じられた︒ 誰彼ともなく︑車がひっくり返っているとか電柱が折れてコースを塞■■いでいるとかの情報が飛び交っていたが︑そのうち︑誰だったか忘れたが一人のドライバーが走ってきて︑﹁浮谷が事故った! 大事故だ﹂と伝えてきた︒ 飛び上がって驚いた私たちは車でコースに出ようとしたが︑もう救急車が帰ってくるという153あっけない現実
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