童夢へ
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GTでS800を取りに行くことにした︒ このMUSTANGは新古車を安く仕入れた私の中古車屋の在庫品だった︒この頃は︑どこに行くのも車で︑電車で移動するという発想はほとんどなかった︒京都から船橋サーキットまで行って忘れものに気がついて取りに戻って2往復したことがあるくらい気軽に移動していた︒というより運転が楽しい時代だった︒ S800は屋根が凹んだというよりは上半分が何もなかった︒ルーフもウインドスクリーンも外れていてフルオープン状態だ︒何でも︑船橋サーキットに走りに行って転倒したらしいが︑かろうじて修理はできそうだったので持って帰ることにしたらキーがない︒ 手を尽くして︑逃げ回るN田を探し出してキーを取り戻したが︑﹁私のせいなのに冬の寒空にフロントスクリーンもない車を運転させるのは申し訳ないから運転していく﹂という︒ 頭にきていたからもう喋るのも嫌だったが︑一緒に来ていた友達も車の状態を見て運転を嫌がっていたので運転させることにした︒ 新車のMUSTANGで先導しながら帰途につき静岡県の金谷峠の下りに差し掛かった時︑信号待ちしている私のMUSTANGにS800がかなりのスピードで突っ込んできた︒居147骨董通りのE家

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