童夢へ
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ているとのこと︒未だにこの家のこの独特で不思議な雰囲気の秘密は解明されていないが︑気さくを通り越して吸引力さえ感じさせるオープンさに︑一日お邪魔しただけの私も︑すっかりと10年来の旧知の仲のような気分になり︑翌日から早速この家の居候第1号となっていた︒ こんな家だから︑私が次々と紹介するレース界の仲間たちもどんどん虜■■■になって︑いつしか︑いつ行っても誰かに出会う馴染みのクラブのような状況になっていたし︑鮒子田も浮谷もみんなお世話になっていた︒ 特に︑次女のI子ちゃんはレースが大好きになりレースの時は一緒に出かけて手伝ったりしてくれていたが︑そのうち︑我々の仲間のHが惚れ込んで奥さんにしてしまった︒ ただ︑プライド高きHは︑私の筋からI子ちゃんと知り合って結婚したということを恥だとでも思っているらしく︑﹁全く別のところから知り合った﹂と言い張っているが︑有り得ない︒ そんな訳ですこしE家には居候しづらくなったので︑それからはもっぱら浮谷の家が定宿になっていた︒市川の大邸宅は落ち着いた趣で︑上品な感じのお母さんがいつも優しく迎えてくれて︑ここの居心地もすこぶる快適であった︒145骨董通りのE家

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