﹁やぶさん﹂ K氏との思い出を語りだすと尽きることがないだろう︒弱冠20歳前後の若者の人生観を根底から変えてしまうほどの衝撃の日々を過ごしていたが︑最初に︑﹁オート﹂に訪ねてきたもうひとりのおじさんである矢吹圭造氏ともそれから長い付き合いが始まる︒ 通称﹁やぶさん﹂は︑さる大手海運会社の御曹司で︑出会った最初の日にやぶさんの家に泊まりに行った時には驚いた︒ ■屋にある広大なお屋敷は︑広大を通り越して茫洋という感じだった︒庭には丘というよりは小山がそびえたち︑ある冬の日に訪れた時には︑やぶさんはその斜面でスキーをしていたくらいだ︒ 神戸を中心としたスポーツカークラブKSCCのエースドライバーとして活躍しており︑鈴鹿サーキットでは著名な人物だった︒ しかし︑私と出会った直後に実家の事業が破綻したようで︑急に大阪の古びた旅館に住むこ138
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