童夢へ
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与えるような変化の気配もなく︑しばらくはいつも通りのバイトに追われる日々が続いていた︒ そんなある日︑バイトの帰りに﹁オート﹂に立ち寄り︑とりとめもない話をしているところに︑﹁この店に林君という人は居るか?﹂と二人の見知らぬおじさんが入ってきた︒なにしろ私が弱冠19歳の時だから誰でもおじさんに見えるが︑今から考えるとまだまだ20歳代だったはずだ︒ 一人はKSCCに所属するレーサーで私も名前くらいは知っていた矢吹圭造氏で︑もう一人は︑私の生涯で出会った最も変な人となったK氏だった︒ 話は︑﹁バックアップするからもう少し本格的なレーシングカーを作って日本グランプリに出さないか?﹂という願ったり叶ったりの話で︑もちろん私は二つ返事で承諾した︒ 少し怪しげでアウトロー的な雰囲気の漂うK氏だったが︑信用もお金も地位も名誉も︑失うものの何もない私に躊躇はなかった︒129オート

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