﹁オート﹂ そんな少しだけ浮ついた気分で京都に帰った私だが︑父に謝ったり借金の後始末などの気の重い現実も待ち構えていた︒ 当時︑京都の北の果てに﹁オート﹂という車好きが集まる喫茶店があり︑私も暇にあかせては通っていた︒マスターやママとも友達だったが︑お目当てはバイトのかわいい女の子のN子だった︒まだ16歳くらいの学生のバイトだが︑向こうも何となく私のことを気に入っているみたいで︑店の常連の中ではカップル扱いだった︒ ただし︑私には片想いの初恋の人の存在があったし︑まだまだ初心だった私はN子とデートをしたことはなかったし手を握ったこともなかった︒ まあ︑N子には興味を持ちつつも初恋の人に操■■■を立ててN子の事は眺めているだけの日々というようなところか︒もっとも︑初恋の人の手も握ったことはなかったが︒ 鈴鹿での私にとってはエポックメイキングな出来事も︑思っていたほどに私の人生に影響を128
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