童夢へ
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を始めていたが︑この他に道はないとはいえ︑これはあまりにも無茶な行動だった︒ ジグソーで不要部分を切り取ったり︑時間がないのでオス型からはぎ取ったままの︑本来は裏側になる粗い面にサンダーをかけて面出しをしたりしていたが︑当然︑痒い痒いFRPの粉は■■■■間だらけの和風建築の隅々に降り積もり︑家族全員からクレームがつくわ︑もっと最悪なことに︑父の描きかけの作品にまで粉がかかり台無しにしてしまった︒父は︑当然のことながら﹁勘当だ!直ちに出て行け﹂と激怒したが︑私は﹁明日になったら出て行ってやる﹂と頑として作業を止めなかった︒ 相変わらず︑父との意思の疎通は母を介してしか成り立っていなかったから︑仲に立つ母はおろおろと父と私の間で罵声の伝言をしていたが︑そのうち︑私の部屋に来なくなった︒ 私はもう気持ちに余裕もなかったし︑普通の民家の一室でこんな作業をする非常識さも充分に 理解していたから︑父が直接に怒鳴り込んできたらもう作業を続けられる自信はなかったので︑諦めてこの家を出ていくしかないと覚悟をしていた︒ 母が父の言葉を伝えに来ないことが何を意味しているのか理解できないまま︑妙に静かな時120

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