もし︑間に合わなくってもS600は既に返してあるのだから迷惑をかけることはないだろう︒最大限の努力をしてみて︑できた部品をサーキットに持ち込み︑そこで採用されるかどうかに■けようと一念発起した私は︑トラックを自宅の前に停めて電源を引っ張り︑荷台の上で本格的に作業を再開した︒電源の不必要な時は向かいの京都御所側の広っぱに駐車して作業を続けた︒ しかし︑現車がないのだから本来は作りようがない︒私は今までの型や型紙などをいろいろ組み合わせて︑ほとんど想像の世界というかデッサン力頼りというか︑そこには実体のないS600をイメージしながら形を決めていった︒ 狭いトラックの荷台の上で︑そこにはありもしない車の車体部品を作るのだから︑とりとめもないあやふやな作業である︒何にも確信が持てない︒よしんばレースに間に合ったとしてもS600と接合する際に全く合わないということも考えられる︒ そんな時︑トラックの荷台に積んであったベニア板製のハードトップの型が︑夜露を避けるためにかぶせてあったシートの上からふんづけられてつぶされているのを発見した︒私も子供117カラス
元のページ ../index.html#125