始めのうちはパーメックNという硬化促進剤を入れすぎて煙をあげて燃え上がったりしていたが︑慣れるに従ってFRPらしいものができるようになってきた︒ とにかく時間がないから徹夜に次ぐ徹夜で︑このFRPの樹脂が硬化する時間だけ眠ることができるというような状態だった︒ ガレージの中は狭くって横になれる場所もないし︑当時は車も持っていなかったから︑ガレージ前の歩道に体半分を出したまま寝たりしていたが︑目覚めると夜も明けていて頭の上を大勢の人たちが急ぎ足で行きかっている︒驚いて起き上がると出勤時間帯に歩道の真ん中で寝ていたなんてことも一度や二度ではなかった︒ 開けっ放しのガレージから匂うFRPの匂いとガレージの前で倒れている私を見て︑都市ガスの中毒だと思って揺り起こされたが︑誰かが救急車を呼んでおり︑あわてて止めたこともある︒ 困ったことに︑サンダーで削るFRPの粉はたまらなく痒いわ︑ぼろぼろの身なりの変な男が歩道で寝ているわ︑何よりも都市ガスが漏れたような樹脂の匂いに何回も大阪ガスが出動114
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