しかし︑のしかかる大きな不安と重圧もさることながら︑今こうして浮谷とレーシングカーの改造について具体的な打ち合わせをしている自分の心の中が︑抑えても抑えても浮足立ってはしゃいで天にも昇る気持ちになりつつあることは隠しきれなかった︒ これからの私の人生においても︑童夢をスタートした時や︑会社を乗っ取られそうになった時や︑50%風洞を建設した時や︑米原に新社屋を建設した時など︑一か八かの大ギ■ンブルに打って出ることが少なくないが︑本質的にこう言う大博打は嫌いではないようだ︒嫌いではないというよりも︑かなり好んで仕掛けているのかもしれない︒いや︑はっきり言って好きだ︒ この時も︑予算的にも時間的にも︑何よりも経験までも皆無のこの状況で︑一か八かというよりも︑もっと針の穴くらいの可能性しかないだろうことは充分に理解していたが︑気がつけば︑何をもっても止められないほど気持ちはすっかりと先走っていた︒ 限られた予算と時間の中で︑あれもこれもとないものねだりをしていてもし■うがないので︑改造はできる可能性のある範囲に止め︑とりあえずは︑ノーズ部分の空力的な改善とファーストバックへの改造に的を絞ることになった︒110
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