﹁サーキット・ホテル﹂ 結局︑この鈴鹿詣でが私の人生を決定づける要■■■となったようだが︑もちろん︑その頃は何をするでもなく︑サーキットにいること自体を満喫しているしかなかった︒自分自身の夢というか欲望は︑依然︑なす術■■もなく持て余したままだったが︑脚光を浴び始めて希望の光が見えてきた鮒子田の手助けをして︑車の整備を手伝ったりピットでタイム計測をしたり︑すっかり脇役が役どころになっていた︒しかし︑浮谷と仲良くなったおかげで本田博俊とか生沢 徹とかいろいろな人たちと知り合いになり︑鈴鹿のサーキット・ホテルに泊まるような時には︑みんなで明け方まで取りとめのない話をして過ごしていた︒ この連中の話といえばもちろんレースの話ばかりだが︑もっぱら走りについての話題が中心になる︒その中で私だけが︑こう改造すればコーナーが速くなるとかこうすれば最高速が伸びるとか異質な話で口を挟む︒まあみんな︑まだそんなことにはほとんど興味のない時代だったから仕方がないが至って無関心だ︒そんな中︑浮谷だけは比較的この種の話に関心を示してく101サーキット・ホテル
元のページ ../index.html#109