﹁バイト三昧﹂ 鈴鹿詣でを始めた頃は︑鮒子田も私もガソリン代や走行料やタイヤ代を稼ぐのに必死だった︒私は以前︑バイクの新車整備でお世話になっていたホンダのディーラーでいろいろな手伝いをしたり︑近所のガソリンスタンドで雑用をこなしたりしていたが︑これらは卓越した自動車に関する知識を見込まれたもので︑自動車関係のところにいれば一目置かれていて居心地は悪くはなかった︒ しかし︑鈴鹿詣でも頻繁になり︑ますますお金が必要となると少しでも効率の良いバイトを探さないと追いつかなくなってきた︒ そんな時︑鮒子田が都合のよいバイトを見つけてきた︒それは幼稚園の送迎バスの運転手で︑早朝と昼過ぎだけ働けば良いので︑その間は別のバイトをしていられる︒ ところが︑鮒子田はプロへの第一歩を踏み出してこのバイトを続けられなくなったので︑私に代わってくれるように頼んできた︒98
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