童夢へ
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﹁ロータス7﹂ そんなある日︑ふいに従兄の将一が訪ねてきたが︑何とロータス7に乗って現れた︒当時はお互いにロータス7が買えるような状況とはほど遠く︑今でいえば︑昨日までカローラに乗っていた奴が︑突然︑ガルフストリームの自家用ジェットで飛んできたような驚きであった︒ よく話を聞くと︑誰かからモーリスマイナーのポンコツをもらい︑その他はすべて手作りで作り上げた自作車だった︒それにしてもよくできていて︑雑誌の写真を見ながら作ったというスペースフレームもきれいに仕上がっている︒製作の苦労話を聞きながら二人で京都の山道を走りまわったが︑目からうろこが落ちたのは︑﹁買えないから作らなくちゃし■うがない﹂という言葉だった︒それまで︑レーシングカーは作りたいが︑高度な工学的知識や工場設備や天文学的な予算が必要だと思い込んでいた私にとって︑それは画期的な発想の転換だった︒そう思うと︑こうして山道を走り回っている偽ロータス7も︑あの鈴鹿で見たロータス23もそんな92

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