童夢へ
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 気がつけば︑日本の自動車レース界はとてもマイナーな世界だった︒その中でも︑特にレーシングカー・コンストラクターという職業は︑日蔭者で知られない存在だ︒ だから家族といえども本当のところは何をしているのかよく解っていないだろう︒ 私自身は好きだけでやってきたことだから文句を言う筋合いはないが︑それでも︑歳を食ってくると自分の足跡も残したくなるし︑総括もしたくなるし︑何か形として残したくなるものだ︒ それは︑自らの人生に誇りを持っている人の自慢話のようなものかも知れないが︑私の場合はち■っと違う︒ 私は︑趣味の世界に没頭して生きてきたから不満は無いが︑成功者かと言えば違うと思っているし︑もし私が実業の世界で成功を目指していたら︑少なくとも︑一部上場企業のトップくらいにはなっていたと思っているから︑そういう意味では落伍者だ︒ 自慢じゃなければ何なんだ? と問われれば︑たぶん︑息子への備忘録のようなものかもしれない︒いや︑それも違う︒弁解と言うか︑説明と言うか︑自己弁護というか︑言い方はいろいろあるが︑解りにくい生き方をしてきた上に表現がストレートだから誤解されることが多く︑小耳にはさむ私の■話のほとんど全てが事実に反しているから︑いつまで生きられるのか知ら2

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