53第3部 結婚から離婚まで頭の中がクエッション・マークで溢れたままマンションに帰って手紙を読み返したら、わなわなと手が震えるほどに怒りが込み上げてきたが、その時は知らなかったものの、その程度の怒りで収まるような話ではなかった。結局、この日(2012年10月6日)が実質的な紛争の勃発日となった。第23章 ワコール代表顧問弁護士の降臨数十年単位で財務も税務も相続対策も依存してきた岡本先生は、つまり、私と洋子氏の懐具合を知り尽くした人だったし、特に洋子氏は塚本家の大掛かりな相続税の脱税に関してひとかたならぬお世話になっていた人だから、公私ともに親密な関係だったはずなのに、洋子氏が私から預かっていた資産の全てを収奪しようと決意した時から、その相続対策を指導し経緯を知り尽くした岡本先生が最も邪魔な存在となってしまったために、何と、岡本先生を排除して、兄の能交氏に頼んでワコールの弁護士を入れてもらったという訳だ。それにしても、この弁護士には驚いた。ワコールHDの代表顧問弁護士を23年間も歴任 (この紛争の始まった2013年当時) し、ワコールHDの監査役にも就任していた竹村葉子弁護士という超大物弁護士であり、加えて7名からなる大弁護士団を投入してきた。いくら能交氏が妹を支援するためとはいっても、この弁護士団はあまりにも大仰だったから、それはまるで、裏木戸の修理を頼んだら大林工務店がやってきたような違和感に満ち溢れていた。当時の私は洋子氏を信頼し過ぎていたために、唐突な離婚の言及も、岡本先生の排除も、弁護士の投入も、違和感だけは溢れていたけれど、それが何を意味するのか全く気が付いていなかった。洋子氏が竹村弁護士に何を頼んだのかは知らないが、竹村弁護士は「これは全部取れます。お任せください」ということになったのだろう。この辺りの雰囲気は、初期の竹村弁護士の主張に明らかだ。「洋子氏の、[公平に分けられれば良い。公平がどういうことか教えて欲しい]という要望に応じ、財産の所有権の帰属に基づいた法的主張を基礎にしつつ、林氏の要望にも配盧した処理方法を模索」との高邁な主旨が述べられているが、既にそこには「財産の所有権の帰属に基づいた法的主張」というキーワードが埋め込まれており、つまり、真の所有者よりも見かけの所有権を盾に財産を取りに行くというメッセージが明確に伝えられていた。
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