38もちろん妻は他人に売却することは出来ないし、配当が目的なら社長が自分の配当金を分け与えても同じことだし、社長が死んだ時に相続税を節税できるというのなら、それをすなわち相続対策と言うのだから、妻も[非上場企業株を君にプレゼントするよ]と言われても[ケーキのほうがいいわ]と言うくらいの話だ。もし私が本当に洋子氏に贈与したとしたら、離婚した場合、第三者となった洋子氏が大株主として経営に口を出してきたり、再婚して夫がしゃしゃり出てきたり、株を売却して見知らぬ第三者が童夢の株主として登場してくる可能性もあるのだから、もとより、夫婦という高度な信頼関係によってしか成り立たない紳士協定であることが解るだろう。このように、妻に対する贈与と相続対策は全く次元の異なる性格と目的を持つ行為であり、夫婦でなくなったら相続の対象外となるのだから、速やかに原状回復するのが常識でありマナーだ。<相続対策についても説明しておこう>相続対策というのは私が死んだ時のための準備だ。一般論として、ある程度の規模の相続対策を考える場合、60代になってから合法的にできる相続対策は少ないから早くから計画的に実施する必要がある。相続対策における名義株の場合、相続人(私)が生きているうちに段階的に被相続人(洋子氏)が買ったことにして名義を変えていく。しかし、本来の価値で売買したら高額な税金が発生するから税務署が認める最低限の価格で売買したことにする。この差額が節税となるが、ここが岡本マジックといわれるゆえんで、今回の場合、決算書では7,600円(1株)の価値の株(これも岡本先生による税務対策用の評価だから実際の評価は遥かに高い)を500円(1株)で売買しており、しかも、その購入費用は私が負担しているのだから洋子氏は一銭も負担しておらず、常識的に考えて相続対策のための名義変更以外に考えられないし、もちろん、私が死ぬ時まで洋子氏の名義を借りているに過ぎない。では、そんな若い時から会社の株や資産を妻や子供の名義に変えていって、途中で倒産しそうになった場合、当然、経営者は、それらの妻や子供の名義に変えていた株や資産を活用して立て直しを図るはずだ。そんな会社が危急存亡の秋に、妻が「私の名義だから私のもの」だから使わせないと言い出して会社が潰れてしまうなんてことが考えられるだろうか。何よりも、会社が潰れてしまったら妻名義に変えていた株は紙切れになってしまうのだから、論理的にも構造的にも、相続対策のために洋子氏に預けてあったという理由以外に洋子氏に会社の株の名義を移すことは有り得ない。この名義株が本事件のキーワードになるので、頭に入れておいていただきたい。
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