24第6章 大博打ところが、林氏の「意表を突く」行動にはリミッターが付いていないようだ。リミッターとは、エンジンが回りすぎて壊れないように回転数の限度を決めて、それ以上に回転が上がらないようにする装置だ。ちょっと話は戻るが、2006年に京都の大原から米原に本社を移転した時に催されたオープニング・パーティに招待された1,000人以上の来賓の全員が、唖然とするほどの大規模な威容に圧倒された。もちろん、そこにいた私も、事前に概要を知っていたにもかかわらず、口あんぐりの状態だった。当時の報道でも「童夢はどこへ向かうのか?」などと、レース界から離れて航空宇宙産業にでも向かうのではないかとの勘ぐりもあったほどだった。そんな心配をよそに、それからも童夢はますますレース界で躍進を続けていた。そのため、林氏の「童夢と林みのるの最後の夢」を聞いても、資金はどうするのだという疑問すら思い浮かばなかったが、その後、いろいろ聞くうちに、マレーシアの少量生産メーカーを買収すると言い出したり、そのメーカーの工場の建て替えや、童夢コンポジット・タイランドの拡充のための設備投資をするなど、想像していたよりも大規模な資金が必要なことが分かってきた。それでも、童夢は無借金経営を達成していたし、かなりの資産を保有していたことから、銀行からの融資も難しくないのだろうと思っていたら、またまた驚くべきニュースが飛び込んできた。2013年3月の童夢からのプレスリリース(要約)今までの資金源であった童夢カーボン・マジックを東レに売却し、その売却益を投入して私の最後のお遊びに使い果たそうと考えたわけです。(中略)私はこの3年間に思いっきり自由な車造りを楽しんで、「あーっ、楽しい人生だった」と満たされた気持ちでリタイアする予定ですので、あしからず。このリリースに対して、当時、ネットでは以下のような話題になった。「童夢が東レに童夢カーボン・マジックを売却」 しかし、すごいのは童夢からのプレスリリースで、経済ニュースでは終わらせない林氏のぶっ飛びコメントが話題になっている。まだ検索すれば出てくるだろう。「売却益でクルマ造りを楽しむ」ぶっちゃけ過ぎだが、カッコいい。
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