ブラジャーVSレーシングカー 2
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19第2部 「童夢と林みのるの最後の夢」(山口正己特別寄稿)第1章 日本の自動車レース事情日本には、世界のレベルから見ても遜色のない立派な鈴鹿サーキットや富士スピードウェイ などの自動車レース専用のコースが合計で6箇所存在し、毎年、大きなレース・イベントが開催されている。そもそも日本の自動車の生産台数は世界有数で、自動車が基幹産業といえるほどだから、欧米の常識からすれば、自動車レースがサッカーや野球のように知られた存在であってしかるべきだ。しかし日本における自動車レースの一般的な存在感は実に寂しい限りで、年に数度のビッグレースですら、その結果は一般メディアのスポーツ欄の片隅にしか載ることはない。しかし、日本の自動車レースは、実のところ発展もしないが廃れもしない、ある意味で“安定した”状況が続いている。これは安定と言えば聞こえは良いが、膠着状態という表現をすると別の観方になる。それは、自動車メーカーが定常的に出資して支える形で日本の自動車レースは一定の規模を保っているから、そんな、世間が無関心な状況でも自動車レースが廃れることはないが、多くの関係者は、その枠組みの中で生きていることに疑問を持たず、それ以上の飛躍を目指す人は少なく、「日本の自動車レース」という安定的な村社会の中で満足している。第2部 「童夢と林みのるの最後の夢」(山口正己特別寄稿)それではここで、林氏の計画していた「童夢と林みのるの最後の夢」という気宇壮大なプロジェクトについて説明しておこう。具体的な動きが始まる前に本書の主題となっている奇妙奇天烈な事件が勃発して頓挫しているから、レース界の方でも知らない人が多いので詳しく説明しておきたいが、なぜ林氏が、こんな途方もない大博打を仕掛けるに至ったかについては、それまでの長きにわたる経緯と、日本のレース事情から説明しないと理解を得られないと思うので、そもそも論から話を進めたい。

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