195第20部 地獄は続く区役所に離婚届を提出した頃だった(2012年末に洋子氏から署名捺印済みの離婚届が出ていたから実質的な離婚は2012年末だが、東レとのM&Aの都合上、区役所への提出は2013年4月となっていた)。人を招くことも出来なかったワンルーム・マンションとは違い、新しいマンションにはいろいろな人が訪れるようになった。当時、ガールフレンドの一人だった睦美は、京大の医学研究室に所属して医学博士を目指していたが、その研究室はマンションの真向かいだったから、時々、部屋に来て掃除や洗濯など甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるようになっていた。まあ、風邪で寝ている独り暮らしのアパートに来ておかゆを作ってくれる女性に惚れるというパターンみたいな馴れ初めだったが、それなりに関係は深まっていったものの、しかし、もう3回も離婚したし、あれほど信頼していた洋子氏の不穏な動きを目の当たりにしていた時期だったから、私には似合わない言葉だが、女性不信が強くなっていたのか、しばらくは一定の距離感を保ちながらの付き合いが続いていた。しかし睦美は、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、変わらぬペースとスタンスで尽くしてくれていたから、いつしか一緒に暮らすようになっていたし、私は、このままの関係を続けたいと思うようになっていたが、さすがに結婚というイメージは全くなかった。ただ、親しい友人達には特別な間柄として認識しておいてほしかったので、友人たちを集めてハワイで「内妻披露宴」をやろうと計画していたところ、友人たちからは「内妻」はひどいとクレームが殺到していたし、ちょうど、その頃、籍を入れていなかった女性(親友の奥さん)の悲劇を目の当たりにしたりして、考えさせられる出来事が続いていたが、それも理由ではあるものの、最大の理由は、私が戸籍上、独身のまま死んでしまったら、残された財産も遺留分として洋子氏が親権を持つ息子に行ってしまい、いわゆる泥棒に追い銭になってしまう。洋子氏のための相続対策を利用して私の資産の収奪を画策する洋子氏に、これ以上の甘い汁を吸わせることは絶対に避けたかった私は、もちろん、愛していることが最大の理由ではあるが、睦美に相続させること、つまり、洋子氏側への資産の流出を阻止することを最大の目的に結婚を決意する。この説明が通用するのかしないのか知らないが、本書に寄稿してくれている山口正己氏は、この原稿を読んで、「この林さんの説明を万人が理解するとは思えないので、この辺りは、さらっと流しておいた方が良いと思います」と忠告してくれている。しかし本書では、私の思いを包み隠さず曝け出しているのに、ある部分はオープンに、ある部分は蓋をしていたら情報操作になってしまうから、どう受け止められるかは知らないが、事実関係を述べておく。とにかく、ハワイに行く約1ヶ月前に、急遽、「結婚式」に格上げとなったが、結婚も4回目
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