ブラジャーVSレーシングカー 2
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192がっかりした。前述したように、もちろん私も、この株の交換については考えていたし、内々に大久保君が洋子氏と交渉してくれていたから目新しい話ではなかったが、ただ、公の場で切り札として持ちだすには躊躇があったから抑えていただけだったからだ。私がぐじぐじと綺麗ごとを並べ立てていると、A弁護士は苛立ったように言葉を遮り、「これだけ策を弄されて貶められているのに、今更、カッコを付けている場合ではない。攻めるべきところは攻めるべきだ」と煽られて、その攻めるべきところを説明してくれた。<無権代理>「(株)良幸株を洋子氏が林さんに無断で贈与した行為は民法の第113条における[無権代理]と言って、後に林さんが追認すれば契約は成立し、否認すれば契約は認められず、時効はない。つまり、林さんに贈与された分だけ追認し、洋子氏名義に変えた分を否認すれば全て林さんのものになるから、取りに行きましょう。多分、折れてくるはずです」と言い、六法全書のコピーを見せてくれた。瞬間、思ったのは、今までの6人の弁護士どもは何だったんだ?という怒りだ! 童夢の25%の株の処理について、散々、協議を重ねてきたのに、彼らの誰の口からも「無権代理」という単語すら出たこともないのだから愕然とした。A弁護士に背中を押されて、お願いすることにした。<あっけない幕切れ>さっそくA弁護士が竹村弁護士の配下に電話をして無権代理の話を持ちだしたら「検討します」となり、時を経ず「交渉に応じます」となり、瞬く間に、洋子氏は洋子氏名義の童夢株、私は私名義の(株)良幸株の所有権を放棄するという契約を交わすに至った。今までの長い長い時間軸から見れば一瞬の出来事だった。たぶん、洋子氏側も「無権代理」が出てきたらお終いだねという認識はあったのだろう、あまりにもあっけない幕切れとなった。A弁護士には、よほど勝算があったのだろう。「林さんは、DCT株の売却益を息子さんに取られているのだから、実質的には生前贈与しているのと同じです。息子さんの遺留分の放棄も条件に入れましょう」と提案してきた。洋子氏側は、これにも直ちに同意して、息子本人が家庭裁判所に遺留分の放棄を申し出て認められた。これにより、取られた資産の内、数億円が取り戻せた。「相続対策などしたこともない」はずのお金に疎い深窓の令嬢の慌てぶりが目に浮かぶが、

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