ブラジャーVSレーシングカー 2
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182第16部 別の世界が見えてきた私にとって、この「本人尋問」も「判決」も衝撃的な出来事だった。当初、あまりに洋子氏を信じ過ぎていたために、ボスの塚本能交氏の「勅命」に功を焦る竹村弁護士の独走だと思い込んでいたし、その後、折々に洋子氏の顔がちらつくようになってからも、洋子氏が竹村弁護士に踊らされていると思っていたくらいだから、途中まで、あくまでも主犯は竹村弁護士だった。しかし、時間の経過とともに、洋子氏が積極的に協力しないと出てこないような攻撃材料が頻出するようになっていたし、竹村弁護士の羅列している主張の内容が全て嘘であることを最も良く知っている洋子氏が、それらの嘘を容認しているという事実も、どう考えても洋子氏が主導していると考えないと辻褄が合わなくなってきていた。冷静で合理的な思考回路を持っていると自負する私が、現実を正視できなかったのか眼を背けていたのかは解らないが、それでもまだ半信半疑のまま「そうとしか思えない」「そんなはずはない」という相反する答えの間で葛藤が続いていたのだから、やはり異常事態、と言うよりも超常現象に思えたものだ。しかし、この「本人尋問」において、法廷で、本人なら明らかに嘘と解る主張を、しどろもどろながらも延々と語り続けている尋問の記録を見て、もう、竹村弁護士に操られているという疑問は吹っ飛んだ。僅かながら残っていた竹村弁護士主犯説が消えるとなると、そこに残るのは、牙をむきだして骨までしゃぶりに来る洋子氏のハイエナのような姿だが、ひとつの答えが出ると、ひとつの疑問が浮かび上がってきた。常識的に考えて、素人の一般女性が、法廷という公的な場所で一から十まで嘘で固めた作り話を滔々と語れるとは考えにくいし、洋子氏がスピーチなどを頼まれた時の緊張とドタバタ具合は良く知っているから、そうであれば「嘘をついている」のではなく「思い込んでいる」のではないかという疑問だ。念のために言っておくが、私は物事を論理的にしか考えないし、科学で証明されたことしか信じないし、宗教も幽霊も催眠術も気功も信じない現実主義者だから、安易にオカルティックな方向に逃げたりはしないが、婚姻中にも洋子氏のそういう一面(前述した祈祷師事件など)を何回も垣間見てきたから、有るか無いかと言えば、充分に有りえる話だった。そうであれば、いままで説明してきた証明できる嘘も、自己矛盾も、何回も変わる主張も、母

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