146私は、前回の和解交渉で洋子氏が宝ヶ池の不動産以外は全て同意していたから、これ以上の争いを避けようと、その唯一、条件の合わなかった宝ヶ池の不動産の奪回を諦めて、泣く泣く条件を合わせに行ったところ、洋子氏はそんなまともな輩ではなかった。もう下鴨の土地を買い取れることが決まった以上、交渉の必要さえもなかったから、叩き潰すだけの目的だろう。「一切のパブリシティを中止することを確約し、違反したら2億1,500万円を支払うことを約束しなければ和解には応じられない」という条件を追加してきた。まあ、人間、金のためにいろいろな事件も起こしてきたし、5,000円のために殺された女子大生も居るから、10億ともなると何が起きてもおかしくはないが、さすが、ここで出てきた 「2億1,500万円」は金粉まみれのエイリアンのようで、ただただ気持ちが悪い。21年間も夫婦だった元夫や大恩ある岡本先生を、ここまで足蹴にして金に執着する姿は、人間って、ここまで貪欲で卑劣になれるものなのかと、背筋が凍るような気分になってくる。こんな人たちを相手にしながらも、脱税を通告する気にもならなかったし、早く終わらせるために売却益の放棄を決意したり、最終的には、あれほど奪還に拘ってきた宝ヶ池の旧童夢本社屋も諦めたのに、本当に、この「2億1,500万円」は私のモチベーションを完全に崩壊させていたから、損得勘定以前に、この種の人たちと関係していること自体がおぞましいと思えるようになっていた。その時は、茫然自失、電池の切れたロボットのように頭も体も停止していたが、もっとも、しばらくしたら立ち直ってきたから、けっこうタフだ。
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