ブラジャーVSレーシングカー 2
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130もはや、京都では林氏と親交が深いというだけで世間が狭くなり、生きにくくなるような雰囲気に満ちていて、これでは、林氏がいくら正義と真実を叫ぼうが、この町では誰の耳にも届かないだろう。大きな権力のうねりの中で生きて来た京都人の生活の知恵が、権力におもねる生き方を身につけてきたということなのだろうか? 冷んやりとした感触と、強いものには逆らわないというドライさが、ちょっと鼻についた。取材を重ねるうちに、だんだん、林氏がとんでもない逆風下で戦い続けている実態が見えてきた。私なら、とっとと引っ越しして逃げ出していると思うが、林氏は京都に居ながら京都の人達の眼を開かそうとして、この強烈な逆風に耐えているのだろうか? 私はだいぶ京都が嫌いになっている。それにしても、もし、この事件の実態が知れ渡れば、いくら京都といえども、ワコールの看板に傷も付くだろうし、塚本商工会議所会頭も吹っ飛ぶくらいのスキャンダルになってもおかしくないのに、京都の町は、さざ波さえ立たない静けさを保っているのだから、さすが1000年の都、守るべき人は守られるように出来ているようだ。そんな京都の町でも、今までの林氏の生きざまを見てきて林氏を信じると言う人は少なからず居たが、名前を出して取材に応じてくれた人は一人だけだった。そのK氏は、以前の出版物でも実名で登場してくれているし、私からの取材の申し込みにも快く応じてくれたからインタビューの原稿は出来ていたのだが、校正の段階になって林氏が掲載の取りやめを言い出したので原稿から削除した。このK氏、「竹を割ったような」という表現がぴったりのストレートな語り口ながら、その核心を突く視点は鋭く、誰にも依存しない一匹狼的な生きざまは文句なくカッコいい人物だったし、この事件についても「本をもらったが読んでないから詳細は知らないし読む必要もない。それ以前に、林さんが嘘をつくことはないから自ずから白黒ははっきりしている」とのこと。細かい情報の分析よりも、ストンと胸に落ちる答えだったから、私はぜひ掲載したいと思っていた。しかし、たった一人のインタビューは否応なく目立つし、林氏自身が孤立している状況下、 協力は有難いが、思いも及ばないところで迷惑をかける可能性も高いので、やはり、掲載を断念するということになり、残念ながら削除した。

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