COLUMN / ESSAY

子ウサギに捧げる「H2K2」 -社会評論-

生まれて初めて選挙投票に行った。こう言うと必ず、国民の義務を果たしていないというような批判を浴びることになるが、国政に関して、狐に任せるか 狸に任せるかなんて選択には興味無いし、ほとんどの国民が狐を選択してきたここ数十年の日本人有権者の心根の卑しさにはなるべく触れないでいたいと思って きたから、私にとっての選挙は他の惑星の地震ほどに関心のない出来事だった。
ではなぜ今回の選挙だけは投票に行ったのかと言うと、いままで、ずるい狐だと思っていたのが実はさもしいだけのハイエナで、狸だと思っていたのが実は子ウサギだと解ってきたから、それなら、よっぽど子ウサギの方がかわいいと思ったからだ。
それよりなにより、選挙期間中のハイエナどもの切羽詰まった戯言は情けなさを通り越して恥ずかしいという気持ちで一杯だったから、どうしても奴らとの決別には一枚かんでおかなければ気がすまないという気持ちだった。
この私の1票が功を奏して子ウサギは圧勝したが? しかし、選挙運動中の両者のアピールする政策は、そのほとんどが「ばらまき方」についてであり、限られた予算を、単純にどのように分配するかの話なのだか ら、その原資を税金として支払っている国民にとっては、自分の出した金が返ってくるだけで一喜一憂するほどのことでもないし、適当に決めておいて必要に応 じて修正を加えていけば、いずれ理想的な形に収斂するだけの話だ。
つまり、月収30万円のお父さんが家族に分かち合う小遣いの額をいろいろ調整して妻や子供のご機嫌をとろうとしているだけで、月収50万円にして暮らしを楽にしてやるというような前向きで希望的な話とは根本的に異なる。

この子ウサギ、ハイエナに「小遣いUPって、どこにそんな金があるんだ?」と追及されると、ひたすら「無駄を省いてねん出 します」と答えていたが、ハイエナ一家は月収と同額ほど借金して生活してきたのだから、そんなハイエナに財源を追及される筋合いはとんと無いのに、反論も しないと言うことは、つまるところ子ウサギも所詮おなじ穴の狢(むじな)なんだろうか?
CO2等排出量についても2020年までに25%減(1990年比)などという、専門家がこぞって夢のような数字と疑問視するような目標を掲げているが、 日本は既にかなり対策が進んでいるからより以上の削減は難しそうだし、それに、日本の排出量は全世界の約3%という事だから、例え25%削減したとしても 地球規模では0.75%の削減にしか過ぎない。
それよりも、環境対策後進国に技術を含む支援を行えば、ノウハウがあるだけに対策は容易だし地球規模としてはより大幅な効果が得られる上、日本の産業には影響は少なく、そのうえ特需的経済効果も期待できるのではないだろうか?
ハイエナが苦し紛れに、「国旗を切り刻んで党旗を作った。考えられない!」と難癖を付けていたが、「事実とすれば憂慮すべき問題」などと引くんじゃない!  国旗なんて、白い布に赤いインクで丸を印刷しただけの物体で、たとえば、白い布に赤いインクがこぼれて丸く広がっていったら、そのいずれかの時点で国旗 となって、仇やおろそかに扱えなくなるという性格のものなのか?
「怪我の出血をハンカチで処置をしていたら国旗になってしまったので、家に持ち帰り額に入れて飾ってあります」というより、「洗濯して使っています」と言う方がよっぽど健全だろ? 単なる偶像崇拝論じゃないか、素早く反論しろ。

言いだしたらキリもないが、なにしろこの子ウサギとても心もとない。
こんな国民だから、一旦、批判に流れ出すと止まるところを知らないから、そうなったら、いくら餌をまいても火に油を注ぐだけになるし、やはり最終的には国家としてのアイデンティティとビジョンを明確に示すことを求められることになるだろう。
そこで子ウサギちゃんに、勝利のお祝いとして一つ標語をプレゼントしょう。それは「H2K2」だ。 器用さと小利口さを武器に技術立国として世界第二位の経済大国を構築してきた日本人が、現在、もっともないがしろにしてしまっているのが「知的資源」を育むという強い意志であり環境づくりだ。
ハイエナに騙され続けてきた我ら愚衆は、政官財の癒着構造によって乱造される公共事業と称する日本列島のコンクリート化によって、現状、日本の株式会社の 5社に1社は土建屋関係と言われるような土建屋国家となり、常にコンクリート化を続けないと潰れる会社が続出するという異常な事態となっているが、これ以 上、いくら橋や道路やダムや空港や港や箱ものを乱立させても、コンクリート化が進むだけで、日本の科学や技術や知的水準は何も向上していかない。

戦後の焼け野原に木と紙のうさぎ小屋を建てて貧困と闘っていた時代は、対欧米の生産拠点として驚異的な復活を成し遂げた が、これは生活レベルが低くて生産コストが安かった時代の話で、これではもう今の贅沢な生活レベルは支えられないし、現在は他の東南アジアの国々がその役 目を担っている。
その一歩先を行っているはずの日本が次に為すべきことは、その世界の生産工場に先進的な科学と技術を供給することであるはずなのに、その日本はコンクリー ト化にひたすら邁進するだけで、知的資源の育成をないがしろにし続けてきた結果、我々の信じる技術立国は、まるでコンクリートで出来た砂上の楼閣のように 国民が信じるほどには堅牢ではなく足元は非常に脆い。

何よりも、ほとんどの日本人に、日本が技術立国であるという自覚が欠けている。私に言わせれば、一体、これから何で食って いくつもりなんだ!!という気持ちだが、「前例がない」が錦の御旗になるような国で新たなる先進的な技術の開発など、彼岸の向こうほど遥か遠い話なんだろ う。
本田宗一郎さんが自動車の生産を始めようと決意した時の最大の障害は日本政府の妨害だった。日本製のOS「TORON」もアメリカの横やりに屈した日本政 府の弱腰で腰砕けになりMicrosoftの寡占状態を許してしまった。日本の科学技術発展史の節目節目に、アメリカの走狗のごとく日本の技術や産業をな いがしろにする我が国家の信じがたい愚かさが読み取れ、まるで売国奴の集団のような官僚たちの思考回路に愕然としたものだ。
もともと、日本の自動車レースの世界が、技術や産業を度外視した、見世物的というか興行的というか、ちょっと違う方向に流されつつある頃だったから、そん なはずはないと調べ始めたら、国家そのものが技術や科学をないがしろにしてはばからない土建屋のための国家だったから納得するしかなかったが、それまで外 国に行っても、日本人であることに「誇り」を持っていたタイプだった私も、「埃」に変わってしまうくらいのショックを受けたものだ。

今からでも遅くはない。日本という国家のアイデンティティとして、発明、発見、研究、開発が最重要テーマであることを強く認識することだ。そう、H2K2と は発明、発見、研究、開発の頭文字だが、無駄な道路を作るより、オリンピックを招致するより、農業水産に金をばらまくより、MicrosoftのOSや Intelを駆逐してしまうほどの優秀なパソコンの開発や、10倍くらいの効率を誇る太陽光発電装置や、高性能な電気自動車用バッテリーなどの開発にどん どんとお金をつぎ込み、本当の意味での技術立国を確立することを優先すべきだ。
贅沢三昧にエネルギーを消費するために原子力発電に頼らざるを得ないとしても、それによって生じる高レベル放射性廃棄物を、地層処理と称してコンクリート で固めて埋めてしまうような杜撰な後始末がまかり通っているだけでも驚くが、この、原子力発電環境整備機構(NUMO)は盛んにTVCMで、「みんなの宿 題だよ」と子供たちにこの後始末を押し付けているのだから信じられない。放射能の半減期は400万年と言われているのだから、多大な国家予算を投じてでも 優先的に解決すべき問題だろう!

要するに、科学者や技術者よりも利権構造に巻き込みやすい土建屋を集金システムとして活用している卑しい政治家と業者のなれ合いが、H2K2を忘れて日本のコンクリート化にまい進させた原動力となっているのだから品のない話だ。
人類に貢献できるような発明、発見を成し遂げた人が時代のヒーローになれるような国としての環境が必要だ。ついでに、反重力装置とか光子ロケットとかタイ ムマシンとか物質転送機とか永久機関とか癌とAIDSの特効薬なんかも作ってしまおう。この道以外に、日本がアメリカを超える手だてはない。