COLUMN / ESSAY

「TV朝日の皆様ご苦労様でした」 ―ルマン話―

長期にわたり放映を続けてこられたこと、これだけの時間をルマンに割いていただいたこと、親友の由良や舘をゲストに使っていただいたこと、日本の レース界の一員として御社のルマン放映には大変感謝している。しかし、聞けば今年で終了との事、当然、来年以降も童夢のシャーシを投入する予定の我々に とって、これからのことがとても心配な一方、少しばかりほっとしている。
もう恒例行事となっているが、帰国後、携帯やEメールを開くと「結局、何位だったの?」とか、ひどいのになると「出てたの?」とか言うようなメールがどっ さり入っている。今年一番多かったのは「13位で残念だったね」というメールだ。
もっとガックリきたことは、レースも佳境に入ってきたころ家内から電話があって、「家族みんなでテレビ観て応援しているけど、なんか15位に落ちてしまっ たね」だって。「えっ、今5位だよ」って言ったらびっくりしていたけど、まあ、正直言って御社のルマン放映には大変感謝しているが、いわゆるありがた迷惑 であったことは確かだ。
ここで、日本人ドライバーのみに興味の焦点を絞った制作コンセプトの是非を問うつもりは無い。どんな視線で物事を捉えようが、それは一民放としての自由である。
フジTVだって同じようなコンセプトの基に日本のトップカテゴリーであったフォーミュラレースをいじくり回しているが、その結果がどうなろうと特に責任を問われるような筋合いのことでは無い。
私が言いたいのは、個人的な理由ではあるが、大変に迷惑な放送内容でしたということだけだ。
今年、ルマンでベントレーが優勝したのは73年ぶりのことだが、昨年まではアウディが連覇していた。グループ企業がベントレーの優勝をお膳立てした結果だ が、この長い歴史の中で熾烈な戦いを繰り広げてきたのは自動車であり、自動車メーカーである。
誰一人として、クリステンセンを勝たせるためにベントレーがスピード8を開発したり、アウディを引かせたりしたと思っている訳ではあるまい。ルマンという 複雑な構造によって成り立ってきた歴史的なレースのほんの表層で活躍するドライバー達は確かにスターではあるが、このレースの本質ではない。
全てを理解してから一部を切り取ることと、りんごの表皮を剥ぎ取るようなことは根本的に違う行為である。どうも、政治家と官僚とテレビ屋は日本国民の知能 程度を見くびっているようにも思うし、案外、的を射ているような気もするし、どちらの方が賢いのか今のところ私には判断がつかないが、とりあえず、TV朝 日様、止めてくれてありがとう。

林 みのる